kechappu

片田舎のスーパーに陳列されているケチャップが見た夢

短編

理想

今週のお題「理想の老後」 「よっこらせっと」 広くないこの家で一番日当たりのいい場所。寝室の窓際に置かれている丸いテーブルと二脚の椅子。その片方の椅子に腰を掛け、高価ではないが買うのに勢いの要ったティーセットを並べる。 足元にすり寄ってくる三…

雨の中駆け回りはしゃぐのが好きだった。束になった髪が飛び跳ね、少しかたい学生服がピタリと肌に張り付く。シャワーの沁みるような温かさに、涙が出そうで好きだった。 寒い日にベランダで吸う空気が好きだった。白い息を吐く度、感覚が鈍く痺れていく。部…

前世持ちの少年

「オギャーオギャー」 とある田舎の村に、新たな命の誕生を知らせる産声が響いた。大声で泣き叫ぶまるこいその赤ん坊には、立派な玉がふたつついていた。 赤ん坊はスクスクと成長し、少年になった。少年になった頃、彼は自分が『前世持ち』だと知った。 母親…

勇者と猫

「ねえねえ、勇者君。君はどうしてそんなに傷だらけになりながら、戦うことができるんだい? あれかい? 勇者は戦う事が好きなのかい? あ、それとも富と名声が欲しいのかい? そうだなあ、魔王を倒した時にはたらふく飯が食えるだろうね、一生飢えることは…

雨と少女と猫

少女は雨が嫌いじゃなかった。 お気に入りの赤い傘を差して歩けるから、嫌いじゃなかった。 灰色の雲も、どこかにぶつかってはじける雨の音も、どこからか漂ってくるそれらの匂いも嫌いじゃなかった。 雨の日の町は何時もより暗くて、陰鬱としている。 その…